パン屋『たね』のポリシー
<「いらっしゃいませ」ではなく、「こんにちは」>

まず、お客様が店内にお入りになるとスタッフ達は「いらっしゃいませ」ではなく、「こんにちは」と言います。
「いらっしゃいませ」は絶対的に立場の違うときに使う言葉です。一方「こんにちは」は親近感のあるときに使う言葉です。
私はお客様とより近い関係でパン作りをしなければならないと常に考えてきました。お客様がどの様なパンを求めていらっしゃるのか?どのような期待をされているのか?実際はもっと細かく知りたいと思っています。いつもいらっしゃるこのお客様のお好みの焼き加減まで知り尽くしたいと思っています。
その為には「会話」が必要となります。
パン屋でお客様とスタッフがパンについての「会話」が出来る環境こそが、よいパン作りに最も大切な事であると思います。
その「会話」を始めるにあたって、まず必要なのが「こんにちは」という挨拶に気持ちを込める事。
なにも、重々しく発する訳ではありません。お客様一人一人がドアを開けて店内へお入りになる時の雰囲気で、例えば顔なじみの常連さんならば、元気な「こんにちは!」になるでしょうし、始めてのご来店のお客様にはプレーンタイプ(?)の「こんにちは」になります。
要は、お客様一人一人に正直に接する事ではないかと思うのです。もちろん、毎回スマートにこなせる訳ではありません。「こんにちは」ではなくて「いらっしゃいませ」と言うべきではないのか?とか、「こんにちは」の持つ親近感がかえって邪魔に思われるお客様がいらっしゃる事も知っています。
ですが、パン屋「たね」としましては「こんにちは」から始まるコミュニケーションこそが、パンを育て、職人を育て、店を育てると思っています。
レストランやホテル、様々な接客業それぞれに「いらっしゃいませ」や「こんにちは」があるとは思いますが、
私達パン屋「たね」には、「こんにちは」がふさわしいと思います。
これからも、いつまでもパン屋「たね」はお客様を「こんにちは」と心を込めてお迎えいたします。


<平台で対面販売>

ここにも大切な意味があります。
大変失礼な事と思われる方もいらっしゃるかとは思いますが、ご一読下さい。
パン屋「たね」のパンは「平台」に並べられています。
その台に乗ったパンを挟むようにお客様とスタッフが「対面」する形でパンを選んでいただくのが、パン屋「たね」のスタイルです。
このことはパンの前ではお客様とスタッフが「対等」であることを意味します。(今、こうして書いていても、とても失礼な事を言っているかもしれないと思っているのですが・・・)
つまり、パンに対する見方をお客様とスタッフで揃えておきたいのです。もちろん、沢山存在するパン屋の中から、わざわざパン屋「たね」を選んで大切なお金を使ってパンを買っていただいているという「有り難さ」や「感謝」の気持ちは忘れた事がありません。
しかし、その立場を踏まえた上でなら前述した「対等」な関係を持つ事は、大変意味があると思っています。
日々、焼いているパンは私達パン屋が焼きたい商品だけを焼いているのではありません。そのパンそれぞれを必要とするお客様がいらっしゃるから焼かせていただけるのです。
パン屋「たね」に並ぶパン達はスタッフとお客様とで決められているのです。
「お客様が欲しいとおっしゃるパンは何でも焼きます」というのもすばらしい事だと思いますが、お客様が欲しい商品だけを並べていたのではお店としての「主張」が無くなります。
バランスが難しいのですが、お客様とスタッフが話し合って、私達が一歩お客様をリードする形が最も理想的だと思っています。
その「理想」を叶える為に「平台で対面販売」は必要不可欠なスタイルなのです。


<パンから始まる豊かな暮らし>

焼いているパンは社会的、文化的、歴史的に価値のあるものでないといけないと思っています。この世に「生まれた」意味が無くてはならないと思います。
私達が焼くパンはフランスをルーツとした食事パンが中心ですが、フランスの文化や歴史を伝えたいとは思いません。それらのパンで、これからの日本の食事やライフスタイル、農業、日本の伝統文化を掘り下げられたらと思っています。
これも、お客様からは分かりづらいかと思われますが、たとえば、この目標を日本食のスタイルで実行したならば、私は今までの日本の伝統・文化の延長線上にいるか、または、旧い伝統の二度塗りの様な作業しか出来ないでしょう。
しかし、フランスルーツの「パン」という食品ならば、新しい観点、視線、技法でより「楽しい」ライフスタイルに貢献出来るのではないだろうかと考えています。
私は一つのパン「パン・ド・カンパーニュ」から様々な事を学びました。
食品に最も必要なのは「安全性」。
素材、製法、販売それぞれに「安全性」を失う物があっては食品としては失格です。
次に「美味しさ」。
美味しくなくては、いくら安全と言われても食べ続ける事は出来ません。「美味しさ」の判断基準には個人差がありますが、小麦や各素材の持ち味をきちんと生かしさえすれば、ほとんどの人が「美味しい」と感じるはずだと思います。
それと「見た目の美しさ」も必要です。
パンはほとんどが茶色ですが、ハードなパンとソフトなパン、それぞれに違う色をしています。パンの味を連想させる色、見た目になっていなくてはいけません。形やクープ(切れ目)にも意味がなくてはならないのです。

これらの点をクリアしてやっと「語れる」パンになります。


まだまだパン屋「たね」は始まったばかり。これからの「たね」にご期待頂き、末永くお付き合い下さいます様、お願い申し上げます。

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パン屋「たね」 KEN
2006年4月5日


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